平成30428日(土)國學院大學たまプラーザキャンパスにおいて、「日本道徳教育学会神奈川支部」道徳フォーラムが開催されました。今年は、道徳が教科化されたということで、いつも以上に多くの方にご参加頂き大盛況の道徳フォーラムでした。

第Ⅰ部 平成30
年度神奈川支部総会

 田沼支部長の開会挨拶では、神奈川支部も6年目に入った
こと、会員数も増え、本日は岩手、新潟、愛知、熊本などか
らも、100名近い参加者がいることなどが話されました。
 また、新役員の紹介や、文京学院大学の小泉博明先生より
6月30日、7月1日に行われる日本道徳教育学会第91回
大会のご案内なども行われました。


第Ⅱ部 模擬授業・鼎談
 テーマ:道徳科の新時代に向けて~「主体的・対話的で深い学び」を生かした道徳科の授業展開と評価~

 i①「支部研究テーマについて」富岡理事
   道徳としての主体的で対話的な学びについては、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」。
  それぞれの視点についてどのように具現化していったらよいのかが課題である。また、今年度の課題
  はやはり、評価をどのように行えばいいのか、ということだろう。実践を積み重ねていきたい。

 ②模擬授業 「『特別の教科 道徳』の評価を見据えた授業を考える」
    授業者:内島 史章先生(川崎市立浅田小学校) 主題名 広い心で B-11)相互理解、寛容
                                   教材名 どうすればいいの?(光村図書出版)
  國學院大學の学生15名を児童役(小学校6年生)に見立て、内島先生に実際に授業をしていただきました。
授業の工夫は2点。1つ目は“多面的・多角的な考え”をどのように出すのか。2つ目は“個人内評価”をどう見取るのかでした。1つ目は「グループでの話し合い」で、2つめは「個人内評価で変容を見る」ことを考えて授業を組み立てたそうです。
 まず授業は、こころアンケート「許すことができるもの」に〇をつけるという導入から始まりました。教材から、「3人の行為についてどう思いますか」という発問をして、グループでの話し合いを設けていました。その際、画用紙に話し合った内容を書くように指示していました。(実際の授業では、「3人はどんなことが許せないと思っているのですか」とした。しかし、この発問だと子どもたちから由希を非難する声が多く出て多面的・多角的にならなかったとのこと)それぞれのグループで話し合ったことを発表し、その後、中心発問では「それぞれの立場を考えると、私はどうすればいいのでしょうか」と聞き、再度グループでの話し合いを設けていました。その結果、グループで出てきた意見の半数は「3人で話し合うべき」というものでした。 最後に、本時の振り返りとして、「今日の学習を通して許すことができるとはどういうことだと思いますか」という発問をしました。学生からの振り返りは「他人の苦しみや痛みがわかる人のこと」「自らが相手に寄り添い受け入れること」「相手の立場を理解すること」といった言葉が聞かれました。終末では、導入と同じこころアンケートを行い、授業後で考えがどのように変わったか個人内評価を行っていました。
 研究協議では
・「許す」とすることで1人を悪くするのではなく、それぞれが自分はどうするべきなのかについて考えていくべきではないか、相互理解というとらえにズレがあったのではないか。
・内容をよく聞けばわかるが、アンケートという言葉を一面的にとらえられると、数値による評価にとらえられがちになるので、扱いは慎重にするべきだ。
・長い目で見て、年間での子どもの変容もとらえて評価につなげていきたい。
 などの意見が出されました。道徳について普段から意識が高い方が多く、多様な視点から意見が出されました。

 ③鼎談「道徳科移行元年への期待を語る」

登壇者:浅見哲也先生(文部科学省・国立教育政策研究所教科調査官)          澤田浩一先生(文部科学省・国立教育政策研究所教科調査官)          桃崎剛寿先生
       (熊本市立白川中学校長・「道徳のチカラ」副長兼中学校代表)
コーディネーター:田沼茂紀(國學院大學教授・神奈川支部長)

第Ⅱ部後半は、鼎談「道徳科移行元年への期待を語る」として4人の先生方のお話を聞き、会場が一体となって、これからの道徳について考えました。

Co :道徳科のスタートにあたり、どのようにスタートしていけば良いのか。
澤 :地域や環境によって違い、同じ道徳はできないが、教科書を基本として先生方は工夫するだろう。
浅 :変わること/教科書を使うこと。評価をすること。
   変わらないこと/全教育活動について指導すること。35時間以上行う事。養うものは「道徳性」。
   求められていること/1、豊かな心を育む 2、これからの時代に育成するもの3点を踏まえた授業
   3、いじめ等の教育課題 4、35時間以上の量的確保 5、授業改善

Co :価値観の押し付け、と言われているが、何を基準に行われているのか。
浅 :〇か×かで判断できる基準は、小さいうちから家庭で学び身につけていく。授業では、正解は1つではない多様な考え方、価値観を学んでいく。色々な意見を聞いて、考えを深めていく。

Co :内面的資質は、道徳だけでは培われない。教科書によって保護者にも理解してもらえるのでは?
桃 :質的改善がされぬまま時数が確保されると、つまらないと感じる教師子どもが増えるのではないか。
   「考え議論する道徳」ができる教材か、を考える。めあてを示してからの話し合いばかりではなく、教材によっては、めあてを示さないで途中で示すようなやり方もある。多様な指導法を試したい。

Co :学習テーマと学習課題が混在しているのではないか?
澤 :小学校と中学校では学校文化が違う。教材は、工夫して授業できるものでなければならない。
浅 :教材分析が大切。それを読んで、子どもたちにはどうすればいいのかを考える。だから、教師は、子どもたちに、どんなことを考えさせようかと組み立てることが大切。

フロア:教科書は使用するが、内容項目をしっかりと行うのであれば、他のものを使用しても良いのか。道徳で習慣や行動まで求めているのか、実効性とは?
浅 :教科書は、採択しているのでそれを使うことが基本。教科書の教材は、1つの内容項目に含まれる多様な価値を網羅するように作られている。安易に他の教材に差し替えることで、内容項目の中でねらっている多様な価値について考える部分が抜け落ちることがある。他の教材を使用する時には慎重に考えなければならない。
桃 :教科書をベースにして地域教材も使用したい。また、実効性については
「自分だったらどうする」と言うと悪いことは言えなくなってしまうが、消極的ではいけない。その部分について考えていきたい。

フロア:「主人公は何ができるか」ということで納得解を探していくわけですが、そのためにはどのように授業改善をしていけばよいのでしょうか。
澤 :方法、アプローチに関しては、文科省で示しているわけではない。道徳科の目標があり、授業でより良い生き方に向けば良い。
浅 :「態度を育てる」というねらいの時には、「~な時には、こんな風にしたい」「体験として役割演技も入れる」など多様に工夫して欲しい。めあてと課題の違いは?ということについては・・・。問題意識をもって授業にのぞむ、自分事としてとらえることがまず大切。目の前の子どもたちのほとんどが気づいていないことをねらいにする。課題にするときに言葉を選ぶと良い。

Co:最後にこれからの道徳の授業についての提言を。
桃 :現場から輝く道徳の授業を。
浅 :色々な側面から子どもたちの意見を引き出せるように今まで以上に柔軟に考えて。
澤 :子どもの知的能力=心ではない。バラエティーに富んだ子どもたちの良さを引き出す授業を。

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 道徳科も始まり、注目されていることが感じられる熱のこもった話し合いがなされた今年の道徳フォーラムでした。


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平成30年度 日本道徳教育学会 神奈川支部総会
道徳フォーラム
2018.4.28
於 國學院大學 たまプラーザキャンパス 1号館AVI教室