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平成27年度 日本道徳教育学会 神奈川支部
支部総会
2015.4.25
於 國學院大學 たまプラーザキャンパス

 

第Ⅰ部 平成27年度総会(※役職は平成26年度のもの)

    開会挨拶(田沼支部長)

 道徳教科化を機に変革を。道徳性を育むことに力を入れていく。その支えの一つとなる本支部の活動紹介。

    議長選出・・・・・木村理事選出

    議事

 ・平成26年度事業報告(森事務局)→承認
 ・平成26年度会計報告(三井事務局)→承認
        会計監査報告(代理神生事務局)
 ・平成27~28年度支部役員選出経過及び役員案(岩間理事)→承認
 ・平成27年度事業計画(案)(森事務局)→承認
 ・平成27年度予算(案)(三井事務局)

  【質】12月23日研究大会の講師謝金、交通費の算出をどう考えているか。
  【答】これまでは厚意もあるが上廣倫理財団の補助が出ていた。交通費に関しては、
     本支部で賄っている。今後の活動については会員を増やしていくことで対応したい。

 ・その他  ○日本道徳教育学会第85回大会について
   ○今後の学習会の紹介

    議長解任

    退任役員挨拶・・・・・細貝事務局欠席

    新支部長挨拶及び支部役員の紹介(自己紹介)

    閉会挨拶(本田理事)
3年目が正念場。若い先生を中心に道徳をどうしたらよいのかという思いは高まっている。先を進む者として道標を残す役割を果たしていくことが本支部の役割。

第Ⅱ部 パネルディスカッション・記念講演

 テーマ「新学習指導要領移行期間に求められる道徳教育充実の課題」

【パネルディスカッション】

コーディネーター:田沼茂紀(國學院大學教授)
       パネラー:水江希(横浜市立六浦小学校教諭)
            三ツ木純子(川崎市立鷺沼小学校校長)
            望月はる美(相模原市立鳥屋中学校総括教諭)
            根岸久明(横浜市立洋光台第一中学校校長)

[田沼]移行期間には様々な課題があろうが、前向きに向かっていきたい。それぞれの立場から道徳教育充実のためにどのように取り組んでいけばよいか語ってほしい。パネラーの学校の現状と課題を話してほしい。

[水江]若い教員、経験の浅い教員が増えている。どうやって道徳の時間を進めたらよいか迷っている。教科化に向けて、気にはなっているが、忙しさの中で後回しになっている。

[三ツ木]社会の変化が激しい。子どもも保護者も昔とは違う。コミュニケーション能力の低い子どもと親と、どうやってアプローチしていくかが課題。社会を生き抜く力をつけることと自己肯定感を持つことが大切。

[望月]自分の学校は緑豊かな地域にあるが、リニアモーターカーの基地が近い。今後、目まぐるしい環境の変化が予想される。少人数校のよさと課題がある。各教科担当が一人ずつしかいない中で、ベテランが退職して新任が第一線で仕事に取り組まなければいけない。若手の指導力を高めるには教師文化の伝達が必要。

[根岸]教員の道徳教育への意識はあり、大切であることはわかっていても後回しになっているのが現状。移行期間では何をすればよいのか、評価はどのように行うのか、課題は多いが、まず取り組めるところから進めていくことが大事。

[田沼]道徳の教科化でも、総合的な学習のときのように乗り切れるだろうという学校現場の自信がある。パネラーの共通の視点として、若手が増えている中、どのように伝達していけばよいのか課題となっている。

[水江]先生達はどんなことが不安か。①授業の展開がよくわからない、②国語などと何が違うのか、があげられる。道徳の時間で何を学ばせるのかを共通理解し、伝え広めていけるとよい。また、心を評価することへの不安もある。子どもの行動の裏側にある意識を日常的に見取ることが大事。道徳の時間で、本音と建前が評価がつくことによって建前ばかりになってしまうのではないかという懸念もある。子どもたちが自分の課題を解決するという意識で取り組んでいけるようにしたい。

[三ツ木]道徳のゴールがわからない教員が多い。また、道徳が軽視されている。そこから子どもの心にもひずみが生じている。道徳のゴールを示すのが管理職の役割。推進教師が力を発揮できる環境づくりをしていきたい。核家族化により家庭で育める会話スキルが少ない。コミュニケーションスキルは学習しなければ身につかない。道徳の授業こそが絶好のチャンスである。求められる道徳的実践力を育む話し合い活動を進めていくためには、聞く力をもたせるのが大事。はじめに自分の考えをもつには、書くことが大事なので、必ず道徳の時間に入れていきたい。さらに子ども自身の意思表示ができる場を、少人数から大人数へと広げられるとよい。小学校の現場で今できることは、このような話し合い活動を深めることだと思う。また、道徳の評価については、教師としては子どもの行動を記録することが必要。子どもの自己評価も含まれる広くとらえる評価であるべきで、教育活動全体でとらえる評価であるべきだと思う。

[望月]道徳教科化に向けて、評価にばかり目が向いているが、世間と教員に対し、本来の意義を伝えていくことが大切である。神奈川県版資料「きらめき」を使った授業展開を主任会で伝達していくことで指導者に自信をつけさせたり、共通の話題で語り合うことができたりする。また、他行との連携も図れる。教科等と道徳をつなげる別葉の作成も必要。

[根岸]管理職として取り組まなければならないことは、なぜ道徳の教科化が求められるようになったのかなどをしっかり把握し、明確に学校の方針を示して教員に伝達することだと考える。評価ができるためには、教師が(生徒が納得できる)指導力を身につける必要がある。指導者が思いや願いをもって授業に取り組むと、おのずと評価すべきことが見えてくるはずだ。推進教師を中心として全員で取り組んでいるという意識がもてるような体制づくりが大切である。まずは、道徳の時間の展開の仕方の基本型をマスターしていくことであろう。

[富岡理事]道徳の評価をしっかりやらなくてはいけない。道徳のノートを作ることが大事。

[海野会員]教科書ができると指導書ができるので、創意工夫が失われるのではないか。

[田沼]教科書ができたら道徳の授業が大きく変わるのかといえば、そんなに大きく変わらないはず。

[根岸]子どもが話したくなるような資料、真実を語る資料が大切である。教師はしっかりねらいをもって指導に当たることが大事。

[望月]道徳で扱う資料は、何年たっても心に残るような資料であってほしい。

[三ツ木]自分で工夫した取り組みはどんな展開であっても教師自身にとって活きていく。共に語り合う、共に考える時間をもたらす資料を扱っていきたい。

[水江]ねらいにたどりつけるとらえやすい資料、日常にかえっていける資料であってほしい。先生が楽しければ子どもも楽しい授業になる。

[田沼]よりよく生きるために教師も子どもも語り合っていく、話題にしていくことが大切。


【記念講演】講師:澤田浩一先生(文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官)

   ・道徳教科化に向けて現在の状況を伝えたい。新しい論理で作り直されている。
・ねらいは道徳性を養うこと。
・目標を明確で理解しやすいものに改善する。一方、わかりにくいものが抜け落ちてしま
 う危惧もある。
・低・中学年には、「教える」要素が強くなる。評価についても見て取れる。
・高学年では、抽象的な思考の次元への適応や他者の視点に対する理解の差によって指導
 の方法が変わってくる。
・特定の価値観を押しつけるものではないのかという懸念がある。指導によってはこうな
  ってしまう可能性があるので注意が必要。多様な価値観があり、時に対立する場合を含
  めて、誠実にそれらの価値に向き合い、道徳としての問題を考え続ける姿勢が大事。
・子どもに対して成長に応じて向き方を変えることが求められる。小学校は寄り添う。中学 校は向き合う、時には対決する。
・評価については、内面的なものに踏み込むことになる。一人一人のよさを伸ばし成長を促
 すような子どもの背中を押す評価という面と、指導に生かす評価という面がある。学習状
 況や道徳性に係る成長の様子を継続的に生かしていけるものにしていきたい。

・観点を示すのには、まだまだ課題がある。例えば観点を示すのに使う用語で「自己を見つ
 め」と使った場合、「自己」とはどういうことなのか、などはっきりさせていく必要があ
 る。今は裏付けとなる理論をまとめているところである。

・授業が成立しなければ評価はできない。
・互いの人間理解が進むことでいじめ問題も解消する。
・(教科書ができれば指導の工夫が失われるのではないかという質問に対して)調査官は方
 法については言及できない。多様で創意工夫のある指導をしてほしい。題材によって、目
 の前の子どもによって取り組みは変わってくるはずである。

○閉会挨拶(富田理事)



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