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現在の中国における道徳教育の実際について次のようなお話をいただきました。

中華人民共和国成立以降、中国の学校道徳教育は、①政治化した学校道徳教育(1949~1978年)、②規
範化した学校道徳教育(1978~1990年)、③人間本意化した学校道徳教育(2000年以降)の3つの段階に
分けられ、思想・政治教育から、子どもの主体性・生活性を重視した人間本意の教育に変容していった。一
方、道徳教育は、理論的に学校教育の筆頭としての位置を占めているものの、学歴社会と受験競争という
圧力に屈して、道徳教育を軽視せざるを得ない状況がある。教育現場での道徳教育に対する投資は少なく
、実践活動があまり重視されてこなかった。学校道徳教育に地域格差があることも大きな問題である。学校
道徳教育は理想的な道徳品性を目指しているが、現実的な社会ではマナーや公衆道徳を守らない大人が
多い。中国政府の政策から見ると道徳改革が進み、理念、目標、教科書等のいろいろな方面で道徳教育
は進歩しているが、受験教育の影響の下、学校教育が形骸化しており、実践力不足が顕著である。日本と
同様にいじめ等の問題が深刻化している中、専門的な教育による指導、道徳授業の評価導入等、多面的
な働きかけによる道徳教育の充実が必要である。

質疑では、こんな話題が出ました。

 ・中国古来の『論語』等の指導は行われているか。→儒学を中心とする『論語』『弟子規』『三字経』等の伝
  統文化の復活運動が行われ、小学生も儒学の経典を学習し始めている。しかし、一部の学校でしか行
  われていない現状がある。
 ・道徳を教える教師の資格は?→道徳専門の教師はいない。一般的に国語の教師が行っている。
 ・教科書により道徳生は高まるか。→教科書の内容はすばらしいが、実際の現場では使われていない傾
  向がある。


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日本道徳教育学会 神奈川支部
第3回 神奈川支部学習会
2014.9.6
於 國學院大學 たまプラーザキャンパス1号館 

「中国の道徳教育の現状について」 講師 師 艶栄 先生
                                           <天津社会科学院日本研究所副所員(准教授)>