馬場先生より 
 相模原市では今まで30年近く、県版資料「きらめき」を中心に道徳の時間の実践を積み重ねてきた。「きらめき」は、神奈川県の道徳教育の充実の一翼を担ってきた資料集である。相模原市は、全37校全ての中学校で使用し、生徒一人ひとりが登場人物の立場になって、その生き方を考えることを中心にずっと研究をしてきた。「きらめき道徳」の歩みは「相模原の道徳」の歩みである。 そして、上鶴間中学校では、道徳教育の充実のために「授業時間の確保」「道徳研修・研究」「道徳の時間の公開(保護者・教員間)」「年間計画・別様の作成」に力を入れてきた。また様々な教育活動と道徳の時間をつなげるために、「点から線へ」「線から立体へ」、成果と成長の見える化を目指して取り組んできた。これからもいろいろな道徳の授業を模索していこうと考えている。


 落合先生より

落合先生からは「生徒と語り合う道徳の授業研究と実践」ということでお話がありました。上溝南中は、昨年度、関東ブロック中学校道徳教育研究大会で発表することを機会に学校全体で研究を進めてきた。「わからない子が主人公になれる上溝南中」ということをスローガンにかかげた。特に研究のねらいとしては「学びの共同体を基盤とした道徳の授業研究」として、生徒の意見や考えを大事にして、それらを「聴き」「つなぎ」「もどす」ことを意識した授業を積み上げてきた。
 具体的な取り組みとしては、校外的な「公開授業」、校内の研究研修を兼ねた「ライブ研修」、それに伴う「焦点授業」、「ローテ-ション授業」「道徳研修会」「有志による学習会」などを行ってきた。また授業では「道徳ストックノート」を使うこととした。本校は、あらゆる教育活動の場面で「我慢」「思いやり」「正直」「好奇心」「感謝」の5つの心の育成を目指し、この5つの1つずつを焦点化し、関連する内容項目を2ヶ月単位で扱っている。それに伴い、ストックノートにその時の子どもの考えや思いを記録することで、短期的、中期的、長期的に自分を振り返ることができ、それが自己評価、教師の評価にもつながることとなる。
 この研究を続けてきた成果としては、子どもたちについては、聴きあう関係を構築することで、楽しさを実感したこと、教師としては、道徳の授業に対する共通理解、連帯感が生まれたことが挙げられる。課題としては、具体的な発問の設定研究を今後も続けていきたいことと、今後は、「きらめき」以外にも幅広い教材に対してのスキルアップを行っていきたい何よりの成果は、子どもたちが自分の言葉で語り、自ら考え、他の人の考えを聞きたがるように成長したことである。 

質疑

◇県版資料「きらめき」は,今後どのような扱いになっていくのか。→長年、研究されてきた素晴 らしい資料・教材なので、今後も副読本・副教材として扱っていきたい。 

◇「いじめ」への対応としての「道徳」をどう考えるのか。→道徳でいろいろな心を育てることで
 結果としていじめがなくなることはあるかもしれないが、授業をすることで
すぐになくなるとい
 うものではないと考えられる。

◇評価については、どう考えているのか。

  <相模原>・・・「要録」には、一年間の記録をもとに大き         なとらえで記載。「通知表」は、一年
         に一度、記録を積み
重ねたもの(ストック
         ノートなど)をもとに少し具体的に記載。

  <横浜> ・・・評価とは、先生が判断するものではない。         子どもが授業の中で、内容項目をどう
         受け止めたか、友達と
の話し合いをどう受
         け止めたか、を見取るものである。
         道徳性に関わる成長の様子を長いスパンで見取
るものである。その上で、要録
         には全体的なこと、通知表には具体的で、子どもにわかる表現で書いて
行く。
         「通知表」は、授業後の振り返りや、学期毎の振り返り、毎時間の座席表への
         教師の記載などの積
み重ねの資料をストックしておき、一年間を通して変わっ
         たことや子どもが気づいたことなどを書く。

   <川崎> ・・・道徳性の評価にならないように、道徳性に関わる子どもの姿・成長を知らせる
         ようにしたい。例文など
で安易に流れないようにしたい。

 そして、終わりの言葉を兼ねて、支部長の田沼先生からは、個の内面にある道徳性と、表現する外に出る道徳に対する態度や言葉などを総合して見ていく中で、外してはならないことは、「子ども自身の納得が必要なこと」である。それには、子ども自身のパフォーマンスがないと見とれない。具体的な動きがない中で、教師が心中を慮って評価するようなことはできない。『子どもの内面を語った姿を見取る』『子どもの学び方を肯定的に見取る』という2つの視点が必要ではないか。という言葉がありました。

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日本道徳教育学会 神奈川支部
第16回 神奈川支部学習会
2017.12.2
於 國學院大學 たまプラーザキャンパス

 「特別の教科 道徳に向けての
   道徳指導の
工夫 ~授業実践から~ 」

馬場  尚子 先生 <相模原市立 上鶴間中学校長> 
落合  恵巳 先生
  <相模原市立 上溝南中学校教諭>



 第16回となる学習会では、馬場先生からは相模原市の現状や道徳部会の活動、上鶴間中学校で行われている道徳教育への取り組みをお話しいただきました。その後、落合先生より、実際に上溝南中学校で行われている実践について、具体的に発表していただきました。