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日本道徳教育学会 神奈川支部
第15回 神奈川支部学習会
2017.9.2
於 國學院大學 たまプラーザキャンパス

 「道徳教科化に向けての
           教師の意識向上の取り組み


杉戸 美和 先生 <横須賀市教育委員会 学校教育部指導課> 
御所谷 歩 先生
  <横須賀市立鶴久保小学校教諭 平成28年度長期研究員>



 第15回となる学習会では、杉戸先生からは横須賀市の現状を踏まえ、教師の意識向上のための取り組みを中心にお話しいただきました。その後、御所谷先生が昨年度取り組んだ実践についてお話しいただきました。
 杉戸先生より

学習指導要領の改訂や評価、指導の充実と言われているものの、道徳科の指導に関わる意識の壁として、「指導の在り方がわからないが、今更聞けない」という現状の課題があることと、20代から30代前半の教職員の数が増え世代交代の今日に、指導力の向上が課題としてあがっています。そこで、学校の教育活動全体で行う道徳教育という意識をもち、全体カリキュラムを立てることが大切であることを取り組んでいるということでした。

 教材の活用・指導方法の工夫といった「指導観」の部分や「教材観」しか考えていない現状から「児童生徒のどのような心を育てたいのか」という重点内容項目を意識することを大切にしたそうです。
 横須賀市では、教職員の困り感へのサポートとして指導主事の立場で教育研究所に2名、指導課に2名、また、教科指導員として小・中に2名ずつ指導・助言体制の確立がされています。各校で行われる校内研究等への指導として赴いています。また、研究会では、研究推進校へのサポートの他に、年に一度小・中別々で合同学習会を開いているとのことでした。さらに、道徳教育の充実に向けて、6月に授業提案(小・中1校)8月に文書提案(小・中2校)また、授業提案(小・中1校)の以上4校の推進校が輪番で提案をする形になっています。このような機会を通して、教師の意識向上のため、皆で悩み、アイディアを出し合い、話し合うことで良い授業作りを目指しているそうです。

御所谷先生より

 御所谷先生からは「特別の教科 道徳」指導における教師の意識向上の取組という演題の下、具体的な授業展開を発表していただきました。
 研究の背景として、道徳の授業について教えてくれる先輩が少ないことが原因の一つではないかと考え、「教師の理解が深まれば、指導に対する意識も高まる」と考え、研究の仮説を立てたということです。実際に3名の先生方は道徳の授業について「やや楽しみ」や「楽しみでない」と答えていましたが、授業づくりを経て「とても楽しみ」に変わったそうです。授業づくりを学年で行う良さとして、①教材分析の質②安心感・自信③道徳についての話題があがるという関心があり、それぞれの高まりが期待されます。
 また、道徳ノートの活用についてもお話がありました。活用する目的としては、授業時点での子どもの思考の広がりの記録になることや、自分の成長の足跡・考えの拠り所となり、自己実現や、自己肯定感の高まりにつながること、また、ねらいに向かう学習の途中で、道徳的価値についての考えを深めている評価ができるという点もあります。ノートの活用を中心とすることで、成長の足跡がつかみやすい、授業以外の場面でも活用しやすい、ということもおすすめの理由ということです。
 検証授業として、「みんなの劇」という教材の授業展開の報告がありました。テーマは「支え合い」です。教師は、「自分の役割を果たすことが、誰かの支えになる」ことを考えさせたいと、教材から「両者は支え合いの関係と言えるのか」と発問しました。その後、2名の子ども(社会体育チームのソフトボールに参加している)に過去の経験を問いました。すると、「誰かが頑張っている姿から、自分も頑張らなくては。という気持ちになったことがある。」という発言がありました。ここでの取り組みでは、子どもの過去の経験を取り上げたこと、意図的指名を活用したこと、資料提示をしたことの3点がよりよい授業へとつながったものと考えられます。
 実践を終えた3名の先生方から出た今後の課題として、「内容項目でおさえることを自分自身の言葉で解釈して捉える必要があること」や「日常生活での子どもの見とりをすること」ということでした。先生方は、「授業がもっとうまくなりたい。そのために授業を実践したい。」と考え、子どもは「道徳の時間で知らなかったことがわかる」という声があがるようになったそうです。今後も、まずは授業に取り組んでみることが何よりも大切であり、取り組むことで成果が必ず表れると言えそうです。
  なお、御所谷先生が配付してくださった「授業づくり辞典」という冊子には、授業づくりに生かせる内容項目の紹介や例示などが多数掲載されています。 

質疑

★杉戸先生へ★

◇教育課程で大切にすべきことはなにか(横浜市立丸山台小学校 森先生)

→道徳教育を年間計画で示すことと、要となる道徳の時間の設定が何よりも大切

→ 学校全体で取り組んでいく姿勢

→ 年間指導計画は、子どもの発達の段階を考慮して立てること


◇保護者へ対する所見の説明について(横浜市立丸山台小学校 森先生) 
 
→ 細かい具体例は出さない(横須賀市)


→ 教師は、子どもの振り返り(ワークシートなど)を見て評価する

→ 保護者への説明の際には、分かりやすい言葉で伝える




★御所谷先生へ★

◇道徳ノートの支援・工夫について教えてほしい
  (寒川町内小学校 原先生)


 → 書くことが苦手な子どもへの手立て→表情マークに丸をつけることや授業でのワークシートのパターン化などを取り入れている


田沼支部長より★

本研究会は社会に開かれた教育を目指している継続的に参加してほしい


次回 
122日(土)学習会   1223日(土)研究大会 川崎市立上丸子小学校にて

                                      次回の学習会も、お楽しみに。
   
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